高専数学まとめノート@はてなブログ

解法のエッセンス。数学のトピックス。

筋道を立てて考える力を養う読書案内 その1

まえがき

 数学の各単元で経験する『手元にある材料から、考え、議論し、筋道を立て、結論を導く』という過程。これは数学の学び以外にも活用できる、大切な学びの1つです。この一連のプロセスの基礎スキルを身に付け、それを利用するセンスを磨くための読書案内シリーズ。今日はその1です。


 今回は初回ということで、やや直接的に、数学を扱った本にしましょうか。数学における”議論”の根幹、『集合・論理・証明』の単元の理解を養う1冊をご紹介。

算数・数学の迷い路: ことばと論理をめぐる20章

算数・数学の迷い路: ことばと論理をめぐる20章

算数・数学の迷い路: ことばと論理をめぐる20章

この本でできること。

  1. 数学のテキストは、数学語で書かれた読み物であることを知ること。
  2. 数学語の持つ、筋道の通った文を創るためのルールを知ること。
  3. 日常語と数学語の言葉遣いを比べ、私たちの日常語である日本語を数学語越しに考えること。

 私達が使っている日常(生活で使う日本)語と数学のテキストで使う数学語の違いを見つけながら学べる1冊。そこに生じやすい違和感の根っこが丁寧に解説されていて、『集合・論理・証明』の知識と数学での言葉遣いもう一度学び直すことができます。学習済みの単元であったとしても、きっと発見があるはず。特に、数学のテキストを読む基礎スキルはかなり磨きがかかるのではと思います。(これは、数学を単なる”計算”の学びで終わらせないことにも繋がっていきそうですね。)

 例えば、”AならばB”の形で書かれた定理を適切に読むためには、『ならば』という数学語を理解できているかが大切。これについては、第2部5節の 『「ならば」という数学語』・『「ならば」の意味』の章の知識がたちまち役立つでしょう。 (参考:論理包含 - Wikipedia) もちろん、論理の単元で必須となる『必要条件と十分条件』『対偶』の根幹からの解説はもちろん、それらを学んで感じる数学語へ抱きがちな違和感についての記述もしっかりとあります。
 この単元で言えば、『数学と自然言語』『真と偽の計算』『2重の否定』『日常語での対偶』の項目を読んでようやっと、論理の単元へのある種の納得を得られる人も多いかなと思います。学習済みの方にとって「そう、それがなんか納得いかなかったんだよねー」と共感しながら読める話題がチョイスされています。
 他の単元でも同様に、日常語と数学語の懸け橋となる知識が詰まっていて、それぞれの単元での数学の言葉遣いの理解を大いに助けてくれるはずです。

 特に、理系であると自負している学生が多い高専生達にとっては、日常語の大切さに気付くきっかけとなる1冊になるんじゃないかな、と思っています。特に、国語を軽視しちゃっている人たちへ宛てて、推薦文を書きたいですね。
 本書の、「は」と「が」による区別・数学と漢字(国語政策)・数学は論理的か・日本語と非論理性 の頁で、私たちの物事への理解がいかに日常語ベースで行われてしまっているかにも気付くはず。(また、言葉そのものがその時代ごとでのルールによって、移り変わっていることを知るのも大切な気付きかとも。)私たちは言葉越しに物事を捉えて自分なりの解釈を得る、ならば、日常語のスキルもきっと磨き上げておいたほうが良いのではと。

 自分で”文系の科目”だと思って蓋をしている事柄に触れることが”理系”の力にもなることを認識するために。直接的に言えば、国語が数学に必要であることに気付くためにも。文理の垣根を取り払った、”言葉”と”論理”の関わりを学ぶ最初の1冊として、ぜひ活用してみて、とおススメさせて欲しいです。

さらに読書案内

 『さらに読書案内』では、やや(ページ数、内容などなどについて)ずっしりとしたおススメ本をおまけ的にさっとご紹介していきます。今回はこの2冊。


数理論理学

数理論理学

数理論理学

 電気電子情報系でかつ論理回路の発想の根幹となる数学に興味があるというあなたへ。論理回路について序盤に記述があり、P75あたりまで読めば、OR・AND・NOTであらゆる組み合わせ論理回路を構成できる理由を知ることができる。(自分は、この解説が読みたい1点で買っちゃいました。文面のレイアウトも、柔らかすぎず堅過ぎずで好みだったり。)


論理学をつくる
論理学をつくる

論理学をつくる

 ものすんごい分量だけど、読みやすい文体で丁寧な解説と豊富な演習問題・問題解説がてんこもり。「じゃあ、もう数学の論理を支える”論理学”からやっちゃうか!」、という気概のあるあなたへ薦めたい1冊。ちなみに、上でご紹介した『算数・数学の迷い路』で日本語について考えるために紹介された、様相概念(様相論理)も”つくる”対象ですね。(参考:様相論理 - Wikipedia